2022.09.14

オンライン薬局「YOJO」運営のPharmaX、約5億円を調達 YOJO Technologiesからの社名変更も発表

かかりつけオンライン薬局「YOJO」を運営するPharmaXは9月13日、KDDI Open Innovation Fund 3号及び既存株主のANRIとグロービス・キャピタル・パートナーズを引受先とする約5億円の第三者割当増資を実施した。調達した資金は、薬局OSの開発加速、自社薬局の利用者拡大に活用する。合わせて旧YOJO TechnologiesからPharmaXへの社名変更と、KDDIとの業務提携を本格的に検討すると発表した。

PharmaXは、医師である辻氏と、エンジニアである上野氏が、2018年12月に創業したスタートアップ。2019年6月には、かかりつけオンライン薬局「YOJO」の提供を開始した。エンジニア×薬剤師を中心に、One Teamでプロダクト開発する体制を構築しており、自ら運営する薬局にテクノロジーを積極的に活用することで、患者UX向上と薬剤師の働き方改善の両方を創出し、なめらかで個別最適化された医療体験の実現を使命に掲げている。



調剤薬局市場は、1974年の診療報酬改定で処方箋料が引き上げられ、医薬分業の推進が図られた結果として急速に発展してきた。本来調剤薬局は、医薬品交付後も、服薬状況や副作用対応・残薬の有無などをフォローし、処方医と情報を共有して常に最善の対応を行うことが求められているが、実態としては「処方通り調剤をして患者に医薬品を交付する=対物業務」に大半の時間が割かれているのが現状だ。

こうした課題に対して厚生労働省は、2015年に「患者のための薬局ビジョン」「健康サポート薬局制度」を策定し、かかりつけ薬局の推進を打ち出しているものの、まだ患者に付加価値を届けるまでには至っていない。

そんな中、2020年の薬機法改正やコロナ禍での時限措置の恒久化・規制改革推進会議の働きかけもあり、直近1、2年で薬局関連の規制緩和が一気に進行した。オンライン診療・服薬指導は、一部例外を除き全面解禁されたほか、2022年4月よりリフィル処方箋(医師の定めた一定の期間内であれば同じ処方箋を繰り返し利用できる)、2022年中に「リモート薬剤師」と呼ばれる薬剤師の在宅勤務、2023年1月より電子処方箋が解禁されるなど、「薬局がオンライン上でかかりつけ化を推進する」ための前提条件が整いつつある状況となっている。



こうした動向を踏まえ、PharmaXでは、「かかりつけオンライン薬局」を実現するオペレーションシステム(薬局OS)を開発している。医療機関に受診後すぐにスマホで薬剤師と服薬指導を実施し、最短当日に自宅まで薬の配送が可能な体制を整備するとともに、薬剤師が定期的に患者へ寄り添いながら、服薬状況や飲み合わせ、副作用などフォローアップを積極的かつ丁寧に行うことで、「かかりつけ」の安心感を提供し、患者UX向上へと繋げている。「YOJO薬局四谷店」を直接運営し、全国にリモート薬剤師を雇用している知見を活かし、患者体験の細かな設計や薬剤師の服薬指導オペレーション・配送体制・チャット対応等をWhole productで完結できるのが特徴となっている。



このほど、薬局OSの開発加速、および自社薬局の利用者拡大を目的として、KDDI Open Innovation Fund 3号及び既存株主のANRIとグロービス・キャピタル・パートナーズを引受先とする第三者割当増資により、約5億円の資金調達を実施した。



これに合わせて、健康アプリ「auウェルネス」を通じて個人向けの日常的な健康活動から医療体験までを全体的に提供する構想を掲げているKDDIとの協働により、薬局DXを中心とした“なめらかな医療体験”を推進していくと発表した。

同時に旧YOJO Technologiesから、新たにPharmaXへと社名変更を行った。「世界で最も患者/生活者主体の医療体験を創造する(Design the world’s most people-centered healthcare experience.)」をミッションに掲げる同社は、具体的なビジョンについては幅広く検討を重ねてきた。「患者のUX向上と薬剤師の働き方の改善を両方を創出することでなめらかで個別最適された医療体験を実現する」という立ち位置が明確になってきたことから、この度の社名変更に至ったとしている。今後は患者にもっとも満足してもらえるオンライン薬局モデルの確立に向けて邁進する考えを示した。

医療・ヘルスケア業界のリーダーを招いたイオンラインベントも予定しており、9月27日には「薬局が目指すミライとは?規制緩和によるオンライン時代の幕開け」、9月30日には「医療・ヘルスケア業界におけるエンジニアリングによる改革と課題」をそれぞれ開催する。

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