2022.09.14

【進化する「返品対応」を聞く】「購入体験プラットフォーム」「リバースロジスティクス」などイノベーション加速


通販業界で「返品対応」の進化が続いている。購入後の顧客体験を高めるプラットフォームが国内外で勢力を増している。日本のベンチャー企業がサービス提供を加速したり、大手スニーカーブランドなどをクライアントに持つ米国の有力サービスが日本に進出。SDGsが叫ばれる中、注目が集まる「返品対応」の現状を、通販コンサルティングで実績豊富なInnovation&Communication(イノベーション&コミュニケーション)の吉村典也代表に聞いた。



――国内の通販事業者は返品対応を強化しているのか?

返品を受け付けないブランドはほとんどないが、ただ返品に対応するだけでなく、「返品しやすい」ことを分かりやすくアピールすることで、購入のハードルを下げる効果もある。通販ならなおさらのこと、「返品のしやすさ」は重要だ。「Amazon」や「ZOZOTOWN」のような大手ECサイトが返品対応をあれだけしっかりやっている。ユーザーにとっては、大手の返品対応がスタンダードになっている。

返品に対応するだけではなく、「返品手続きの体験をどう向上させるか」「返品理由を次のマーケティングや商品開発にどう生かすか」「返品送料をどう抑制するか」といった次のフェーズにおける試行錯誤に取りかかる事業者も増えている。海外のサービスや国内のベンチャーから新たな返品ソリューションも登場しており、そのイノベーションが返品対応を進化させている。


▲Innovation&Communication 吉村典也代表

――どのような返品ソリューションが台頭しているのか?

米国発の「Narvar(ナーバー)」というサービスがある。2021年に日本に進出し、国内向けのサービス提供も始めている。この「Narvar」は、ECにおける注文後の買い物体験を向上させるプラットフォームだ。サービスを導入すると「Amazon」のような大手モールではなくても、自社ECサイトで購入した顧客に、専用サイトで配達予定日を伝えたり、配送状況を可視化したり、配送を通知したりすることができる。これまで大手宅配サービスの追跡番号から確認していた情報を、自社のサービス内で購入者に伝えることができるようになる。このことで購入者に安心感を与えるだけではなく、確実に顧客が確認する情報ページで次の購入を促すプロモーションも可能になるのだ。

この「Narvar」の特徴的な機能の1つに「返品」がある。自社ECサイト上で手軽に返品手続きができるだけではなく、自宅への集荷や近所のコンビニエンスストアへの持ち込み、手書き不要なQRコードの送り状発行など、利用者のニーズに合わせた返品プロセスを提供できる。返品対応状況を可視化し、返金手続きの状況も明確に伝えることで、「返品」という本来、顧客にとってマイナスの体験を、高いレベルの接客を受けたような体験に変えるというのだ。

「Narvar」以外にも国内のベンチャー企業が購入体験プラットフォーム「Recustomer(リカスタマー)」を提供しており、こちらでも返品・交換をスムーズに対応できるようにしている。

返品商品を受け付ける「SMARI(スマリ)」というサービスも普及しつつある。コンビニエンスストアや鉄道などに配置された端末から伝票記入などの面倒な手続きが不要で、手軽に返品商品を預けることができる。

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