「デジタルシフト」が叫ばれ、EC市場も堅調に伸びている昨今だからこそ、立ち返るべきマーケティングの本質について書いてみたい。
例として、ファッションの購買行動を想像してみよう。私たちが普段、服を買いに百貨店やセレクトショップに足を運ぼうとするとき、以下のどちらの気持ちでいることが多いだろうか。
A:「このブランドの〇〇を買う」と詳細まで購入意思を固めた状態B:「なんかいいものないかな」と偶然の出会いを求めている状態私はAもBも双方複数のシーンが思い出された。そして、「A・Bどちらのケースが多いか?」と問われれば「B」に手を挙げる。
私たちは買い物という行動に「欲しいものに対価を払って手に入れる」以上に「出会う楽しさ」を求めているのではないだろうか。
未知なファッションブランドと偶然の出会い、店員さんや集うファンとの出会い、そこで生まれる会話から得るブランドに関する一段深い情報との出会い・・・
2020年、デジタルに求められる役割が大きく変わる
デジタルマーケティングに携わっていると、どうしても「購買」に重きを置いてしまう。
「AIDOMA」、「AISAS」そして「DECAX」といった購買行動のフレームワークのうち、「A(Action)」周辺はデジタル、その前段はマスという棲み分けが明確であった時代はそれでも良かったのかもしれない。
(「ショールーミング」という言葉が流行った時期までは)
しかし時代は「ショールーミング」から「Webルーミング」に、そして今は社会的背景もあり認知から購買、その後の行動までをWebで完結する生活者がほとんどである。
2020年、外出自粛のために半ば強制され、窮屈に感じるこの消費行動だが、おそらく社会環境が改善されても一部(もしくは多く)の生活者はその消費行動に馴れ、昨年以前には戻らないのではと言われている。
そう、ファッションで言えばフラッグショップや雑誌が担っていた「知ってもらう」「好意を抱いてもらう」という目的のコミュニケーションは、その後SNSの台頭、インフルエンサーの活躍によりデジタルにも場を移し始めていた。
だが、今年さらに大きなデジタルシフトの波が来るのではないだろうか。
コンテンツマーケティング・ネイティブアドが改めて注目されている背景
上記で記載した通り、従来デジタルに求められることは「購買してもらうこと」であった。この土俵、顕在的ニーズを持つ生活者へのアプローチにはSEMやリターゲティングが優勢だ。
仮にweb上のコミュニケーションをリアルショップに例えれば、「このブランドのジャケットが好きですよね」「このスニーカー、前に悩んでいましたよね」というショップ店員の声が聞こえてくるようだ。
一方で、潜在層へのアプローチをデジタルで実現しようとするときには、SNSやインフルエンサーマーケティングに加え、コンテンツマーケティング、ネイティブアドを検討する価値がある。
過去にコンテンツマーケティングが流行った際の動機のひとつは「広告を純粋なコンテンツに見せかけることができる」であった。
しかし現在は生活者もタイアップ広告やネイティブアドを「広告だ」と認識した上でクリックをしてコンテンツを読んでいる。
その場でピンときて衝動的にバッグを購入する人もいれば、3ヶ月後ふらっと店に戻ってきて、以前手に取って眺めていたサングラスを買っていく人もいる。
コンテンツマーケティングやネイティブアドを介したブランド体験は、新たな出会いに期待し店舗にふらっと足を運び店内を見回したときのあのワクワクした感覚なのではないだろうか。
そう、生活者がいまデジタルコミュニケーションに求めているのは従来リアルな環境では当たり前のように感じていた「出会う楽しさ」なのだと思う。
【著者プロフィール】popIn株式会社 Discovery事業部 関根 優総合人材サービス会社、ソフトウェアメーカーを経て2017年よりpopIn株式会社に入社。現在は主にナショナルクライアント、総合広告代理店に対してのサービス提供に従事。
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