マンガやアニメ・同人誌やキャラクターグッズ等の委託流通及び店舗運営事業を行う虎の穴は6月23日、2022年度の流通総額が300億円を突破する見込みとなったと発表した。通販売上高は前期比110％の164億円で着地する見込み。戦略的集中による直営店舗縮小、新規オンラインサービス事業及びEC事業の拡大等、さらなる事業構造改革を断行し、2025年度に流通総額400億円超達成を目指す。
実店舗の「コミックとらのあな」の運営をはじめとする同人販売大手の虎の穴は、2022年度（2021年7月～2022年6月）の業績ハイライト、事業別KPIデータなどを公開した。
2022年度の流通総額は、同社初となる300億円（前年比121％）を突破する見込み。あわせてサービスユーザー数1141万人（前年比147％）、およびクリエイター登録数51万人（前年比173％）を達成する見込みとなった。流通拠点数は、前年から6店舗増え23店舗となった。
【流通総額の推移（2022年度は見込み）】
ファンの創作と発信が急速にオンラインに切り替わる中、虎の穴では事業構造転換を宣言し、直営店舗事業の縮小を行う一方、通販・Webサービスへの投資転換を進めてきた。オンラインサービス事業へ積極的に注力した結果、EC「とらのあな通信販売」やクリエイター支援サービス「ファンティア（Fantia）」がともに事業成長し、この1年で流通総額を50億円以上伸ばすことに成功。創業から初めて、流通総額全体で300億円突破を達成する見込みとなった。
現在とらのあなの主力である女性向け販売については、97％を通販、2％を池袋店が占めていることから、このたびの事業構造転換（オンラインへのシフト、直営店舗の集約）による女性向け同人流通への影響は皆無であると推測されるとしている。
主要事業別KPIデータの2022年度見込みは、「とらのあな通信販売事業」が売上高164億円（前年比110％）、年間受注数61万件（前年比116％）、累計登録サークル数10万人（前年比106％）、年平均同人誌流通数1860万冊（前年比101％）。巣ごもり需要に加え、オンラインサービスのユーザー層の利用拡大も合わさり、売上高が昨対比110％と堅調に推移する見込みとしている。
「ファンティア事業」は、流通総額121億円（前年比265％）、累計登録会員数750万人（前年比163％）、登録ファンクラブ数41万件（前年比205％）、累計コンテンツ数116万件（前年比206％）。通販と同様の傾向、ブランドの認知拡大に伴い、流通総額は昨対比265％と躍進する見込みとなっており、今後も市場拡大によるさらなる成長が推察されるとの見解を示した。
【ファンティア事業の流通総額の推移（2022年度は見込み）】
今後の事業方向性にも言及し、通販事業においては、積極的なイベント支援や配送強化による、国内クリエイター及びファンの創作と購入の支援。海外向け販売に係わるUI/UX改善・マーケティング・流通網の構築にも取り組み、日本の同人作品の国外ファンへの販売を推進する。
店舗事業においては、オンライン事業への戦略的集中推進のため、直営店舗縮小を継続し、2023年度中を目途に旗艦店への集約を行うとしている。漸次「Shop in shop（出張所）」や「Pop-up Store（イベント出店）」等へ置き換えを行い、現在の市場に即した形へと店舗の最適化を図る考えを示した。
ファンティア事業においては、他の配信サービスで規制対象のASMR領域など、セグメント拡大及びクリエイター獲得に積極的に投資し、さらなるエンタメ体験のための豊富な選択肢を実現するとしている。また、同事業で既に20％超存在する国外のファンとの柔軟なコミュニケーション確立のため、海外ユーザー向けの技術開発を推進する。
2025年度までの経営目標も発表している。2025年度に流通総額400億円、サービスユーザー数1500万人の達成を目標とし、各事業に取り組んでいくとしている。
【2025年までの流通総額の目標】
虎の穴は、あらゆる創作活動とそのニーズに応えるべく “創造と発信の場で、人類の幸せに貢献” を経営理念とし、世界で初めて「同人誌」をイベントの場以外で一般に流通させる活動を展開。創業以来一貫してクリエイター及びファンへの支援を続けきた。1人でも多くのファンに1人でも多くのクリエイターの作品や想いを届けられる社会を目指して、今後も幅広いジャンルのクリエイターへの支援と、世界に誇る「アキバカルチャー」の発信を国内外に向けて行い、独自の価値創造に取り組んでいく考えを示した。
