本連載では、米国のアマゾンに日本製の食器を出品し、年商数千万円を売り上げるUnion marc(ユニオンマルク)の東あゆみ社長が、米アマゾンの出品のメリットやデメリットについて解説します。東社長の体験をもとに、ローコストで越境ECに取り組む現場の声をお届けします。
米アマゾンはコロナ禍
私は2016年に米国アマゾンへの出品をスタートし、今年で4年目になります。
現在は、新型コロナウイルスの影響により、米国アマゾンへの出品については、克服すべき課題があると強く感じています。4月10日現在、FBA(フルフィルメント・バイ・アマゾン、Amazonの物流サービス)の倉庫への納品制限や、国際郵便小型包装物(SAL 便)の受入停止などの措置が取られており、配送遅延も生じています。航空機が大幅に減便・運休となり、輸送ルートが途絶える事態も発生しています。
今、越境EC出店の厳しさをまさに肌で感じています。ただ、コロナの影響がなくなれば、米国アマゾンへの出品は再び、リスクやコストが少なく、ハードルの低い越境ECの手段といえるようになるでしょう。国と国との協力体制の整備が進む中で、課題は今後徐々に解決されていくだろうと考えています。ECの発展が、より素晴らしい世界につながっていけばと期待しています。
こちらの連載では、米アマゾン出品のメリットと課題について、私の経験を踏まえて解説していきたいと思います。
米アマゾン出品の5つのメリット
私の経験をもとにいうと、米国アマゾンへの出品には主に、次の5つのメリットがあります。
① 手間がかからない。
② 接客が最小限で済む。
③ 繁忙期にも配送が楽(ホリデーシーズンには普段の倍以上売れましたが、FBAを利用しているため、問題なく配送できました)。
④ セラーセントラルの画面やサポートが日本語に対応しているため、管理しやすい。
⑤ 日本で売れない商品が売れる可能性がある。
一方で、デメリットは次のような点です。
① 為替の影響を受ける。
② 送料が高い。
③ FBAの納品送料を抑えると、納品までに2~3週間かかるため、機会損失が発生しやすくなる。
④ 米国人向けの商品説明、キーワード、商品名を考える必要がある。
⑤ 配送時のトラブルがあった場合、時差もあるため対応に時間がかかる。
⑥ 返品・交換・紛失などの対応になった場合、自社負担が大きい。
私が米国アマゾンへの出品を開始した2016年当時、米国向け自社ECサイトの作成費用の見積もりを取ったのですが、200万円以上かかるということでした。なんとか現地サイトを開設しましたが、その後の運営が継続できず、結局そのサイトは閉鎖してしまいました。
自社ECサイトを作るとコストが高く、継続が難しい反面、米アマゾンへの出品は、初期コストを抑えて出品できたので助かりました。
出品を先回りで仕組化
越境ECを開始する際は、まだ社長ではなく取締役でしたから、社内での調整が大変難航しました。
社内では当時、国内向けのECの通常業務が優先でしたから、越境ECにかかる手間は最小限に減らしたいというのが本音でした。
米アマゾン出品の担当者をつけたくても、売れるか分からない「越境EC」に人材を増やす余裕はありませんでした。米アマゾンへの出品を始める前から、私以外の経営陣を含め社内スタッフは、「越境EC」に対する壁を作ってしまいがちでした。
実際に、米アマゾン出品を始めてみて感じたのは、意外と、日本人スタッフだけで運用できるということでした。手間なく実施できたのは、アマゾンだからこそだと思います。
米アマゾン出品を始める前に、かかるコストや人材など、必要なことを調べ、先回りして仕組み化しておいたのもよかったと思います。そうやって、社内を安心させることも、越境ECを始めるにあたっては、必要なのではないかと感じました。
<著者プロフィール>
東(あづま)あゆみ氏1983年生まれ。岐阜県出身。2006年から楽天市場をメインとした店舗運営を行う。楽天市場では、月間MVP店舗を表彰する「ショップ・オブ・ザ・マンス」も獲得。自社サイト、ヤフーショッピング、アマゾン、越境EC出店を経験。2018年にユニオンマルクを設立し、越境EC事業などを継承。2020年現在はネットショップの運営代行事業を展開している。日々の業務で手が回らないという店舗のサポートも行っている。
株式会社 Union marc (ユニオンマルク)
https://unionmarc.commail:info@unionmarc.com
tel:052-908-1112