2022.04.08

【徹底解明<ECにはびこるサイバー犯罪>】第3回 急増する偽ECサイト 2021年下半期は2倍に


近年、偽ECサイトによる被害が急増している。国民生活センター(国セン)によると、偽サイトによる相談件数は、2021年上半期(4~9月)が4787件だったのに対し、2021年下半期(2021年10月~2022年3月)は未集計ながら8732件になったという。未集計分の相談を含めると、下半期の相談件数は、上半期の約2倍となる見通しだという。特に、コロナ禍で増えた「閉店」を悪用して被害を拡大する偽ECサイトが増えているようだ。


偽サイトの種類とは


偽サイトと言っても、その手口はさまざまだ。

手口のパターンは主に、①購入時のクレジットカード情報取得を目的としたフィッシングサイト ②代引きで偽のブランド品や、不良品を発送するサイト ③限定品などを前払いで購入させるサイトーーの3つに分類できるようだ。

寄せられる相談の中では、①と②の手口が急増しており、実在する百貨店や家電量販店などの名前やロゴを使用するケースが多いという。




「百貨店閉店」でセール


2021年下半期から急増しているのは、実在する百貨店の「閉店セール」を装った偽ECサイトだ。国センでも2021年11月に注意喚起を行っている。

実際に閉店した百貨店の名前やロゴを使用しているケースが目立つという。「在庫処分で8割引」など、大幅値引きをうたったSNS広告などで、サイトへ誘引するのが手口だ。消費者からすると、「実際に閉店した」という事実があるため、信じてしまう傾向にあるようだ。

決済手段のほとんどは代引きになっており、実際は偽のブランド品が届くという。「受け取って、支払いを済ませたあとに偽物と気付く。支払いが完了しているため、その後の返金対応が困難になってしまう」(国セン担当者)と話す。「高級ブランドバッグや時計で、大幅な割引はほとんどない。怪しい広告を不用意にクリックしないようにしてほしい」(同)と注意喚起している。

(公社)全国消費生活相談員協会(全相協)にも、偽サイトの相談は立て続けに寄せられているという。石田幸枝理事は、「電話番号があってもつながらない、住所もでたらめというケースがほとんど。購入後に対応することは困難」と話す。「少しでも怪しいと思ったら、サイト内を細かく確認する。メールの返信が、『日本語がおかしい』『やたら短い』という場合も多いので、必ず確認してほしい」(石田氏)と話す。

偽サイトの多くは、短期間でページがなくなることが多い。ただ、一定期間ページを残すケースもあるという。「『準備中』『発送中』『在庫切れ』などのワードでごまかし、長期間存在させる偽サイトもある」(日本サイバー犯罪対策センター 経済・金融犯罪対策チームリーダー 大野克巳氏)と言う。「詐欺と気付かないため、通報や相談が遅れる。他に被害者も増える可能性が高い」(同)とも言う。偽サイトを早期発見するためにも、怪しいと感じた段階で一度相談することが重要だという。


事業者側にできる対応策


実際に偽サイトを作られてしまった事業者は、自社のホームページやECサイトでの注意喚起が必須となる。

2021年、偽サイトが作られたアイリスオーヤマでは、公式ホームページと自社ECサイトのトップページで、偽ECサイトの注意喚起を行っているという。「昨年の秋に、最初の問い合わせがあり、社内ですぐに対応を検討した。行政からの注意喚起もあり、現在の問い合わせは減少傾向だ」(担当者)と話す。

「自社で注意喚起を行うことは、顧客を被害から守るだけでなく、企業を守ることにもつながる」(前出大野氏)と話す。「明らかな偽サイトはもちろんのこと、高額転売など、自社が把握できていない事象に関しては、ECやSNSで注意喚起をし、被害拡大の防止につなげてほしい」(同)と話している。










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