2022.03.07

JTBとジェイグラブ、オムニチャネルによる越境EC販売代行サービス「j-Grab Mall」提供開始

シンガポールにあるJTBトラベルサロン高島屋S.C店内のJTBるるぶギフトショップ(イメージ)

越境ECベンチャーのジェイグラブと、交流創造事業を推進するJTBはこのほど、越境ECモール出店とJTB海外店舗内のショールームストアを活用したオムニチャネルによる日本製品の越境EC販売代行サービス「j-Grab Mall(ジェイグラブモール)」を開始した。第1弾として3月下旬より、シンガポール高島屋の「JTBるるぶギフトショップ(高島屋店)」において、商品サンプル展示とオンラインによる注文販売を行うショールームストアを運用する。越境ECサイト利用時の負担を軽減し、中小事業者の手軽な海外販売を支援するとともに、リアル店舗での体験価値に対するニーズにも対応を図る。事業者応援施策として、初期費用0円、販売手数料20%でスタートできるスタートキャンペーンも実施する。

【<画像6点>出店が決定している商品の一例】

ジェイグラブとJTBは協業し、オムニチャネルによる日本製品の越境EC販売代行サービス「j-Grab Mall」の提供を開始した。事業者は、日本語の商品情報を提供するだけで、越境ECモール「j-Grab Mall」へ出品することができる。日本好き外国人170万人が集うFacebookページ「JAPAN CRAZE」やInstagramを活用したインフルエンサー販促などのプロモーションサービスもワンストップで利用可能となっており、ノウハウを覚えたり、先任者を置いたりする必要がない。



加えて海外のショールームストアでも展示販売が可能という大きな特徴を備える。JTBの海外店舗が「j-Grab Mall」のショールームストアとなり、海外消費者に商品とのリアルな接点を提供することで、例えば化粧品であれば、実際に試用できるテスターを利用したうえで、QRコードのリンク先の「j-Grab Mall」からオンラインで購入するといった使い方が可能。事業者は海外の消費者にオムニチャネルでの購買体験を提供できる。

在庫管理から配送まで自動化できる「フルフィルメント・サービス」も備え、事業者は商品在庫を国内の指定倉庫に置くことで、梱包から海外配送までの物流業務を委託可能。貿易事務をはじめとした国際物流業務、インボイス発行、国際伝票や税関告知書の作成などの作業は不要で利用できる。ショールームストアに設置する冷蔵冷凍庫で商品を一時保管することで、冷蔵・冷凍食品も販売ができ、購入者は店舗でも商品を受け取ることが可能だ。

これらの特長により出店事業者は、商品説明を外国語に翻訳したり、海外に発送したりすることなく国内取引で完結し、海外への販路を創出できる。サービス設計にあたり要望調査をした日本製品を製造・販売する事業者30社が、3月1日のサービスインと同時に出店することを決定している。また同サービスは、東京都が支援する「令和3年度海外向けECモールモデル構築事業」にも採択されている。

展示販売の第1弾として3月下旬から、シンガポール随一の繁華街オーチャードエリアに位置する「シンガポール高島屋」に店舗を構える「JTBるるぶギフトショップ(高島屋店)において、商品サンプル展示とオンラインによる注文販売を行うショールームストアを運用する。また、4月末までに申し込みの場合、初期費用0円、販売手数料20%でスタートできるスタートキャンペーンも実施する。

「j-Grab Mall」のサービス開始に至った主な背景には、越境ECや海外販売支援サービスへのニーズ拡大、越境ECサイトへの出品のハードルの高さを挙げた。日本には、海外需要の高い商材を開発・製造する中小企業が多数ある。ジェトロ海外ビジネス調査によると越境EC利用企業は約30%だが、コロナ禍前2018年度の13%から倍増している。新型コロナの影響で事業者の海外出張が難しくなり、現地展示会や販売会の中止が相次ぐなか、代行販売や海外店舗での商品販売を希望する事業者数はこの2年で30倍に増加している。その一方で、越境ECサイトの構築・運用に必要なIT、外国語、物流、決済、販促、事業ノウハウ等のスキルや経験を備えた人材確保は難しい状況にある。また、越境ECサイト構築に数百万円~数千万円、毎月のランニングコストや広告費を含めると十数万円~数百万円と多額の投資コストが必要になるなどハードルが高い。


▲海外ショールームストアを活用した「j-Grab Mall」4つの特徴

また、EC販売の弱点は、商品を手にとり、触れたり、匂いを嗅いだりできず、写真と説明文、価格で購入を判断しなければならない点にあり、「ネットだけでの訴求には限界がある」「商品展示をさせてほしい」という声がこの2年で多数寄せられたこと。日本の生鮮食品・冷凍食品は海外で人気があるものの、輸出には品質維持のための輸送ノウハウをはじめ、検疫・通関・輸入規制など手続きが煩雑で手間がかかるため、小規模なビジネス形態が多く、着手に踏み切れない事業者が多い現状を挙げ、リアル店舗での体験価値に対するニーズ、冷蔵・冷凍食品の需要拡大もサービス開始に至った要因となったとしている。

今後は、在庫の少ない事業者や、海外販売で難しいと言われる冷蔵・冷凍食品の販売、特にコロナ禍による外食需要減に伴う食品ロス解消といった社会課題を解決するため、小規模事業者や製造業者などを優先的にサポートするとしている。

技術的な展開としては、海外で過去に売れていた商品のビッグデータを活用し、ジェイグラブ越境ECコンサルタントが海外販売価格の予想を行う。6月には、「j-Grabショールームストア」専用のアプリを導入する。ショールームストアに展示されている商品のQRコードをアプリで読み込むだけで、商品説明と販売画面に遷移し、その場で購入できるうえ、読み込んだ商品は閲覧履歴に残り、いつでもアプリから商品情報にアクセスして再購入することができる。ジェイグラブからのお知らせをプッシュ通知したり、アンケートに答えると商品購入時に利用できる割引クーポンを提供したりする機能も備えるとしている。さらに閲覧・購入データをAI分析して販売事業者に提供することや、ショールームストアでの行動分析を実施して1日にどの程度商品が見られたか、回遊していたのかなどのAI分析データの提供も検討している。

2022年度中のショールームストアは、JTBシンガポールのほか、台湾で複数回の期間限定実施を予定。2023年度以降は、国や地域を拡大して展開するとともに、常設のショールームストアの開設も視野に入れているとした。2022年度の参加事業者数100社、取扱高1億円を目指し、事業開始から3年目で参加事業者数15倍、取扱高20倍を目指すとしている。

【事業拡大の計画】







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