2022年のEC業界はどう動くのか――EC業界の”現場”を取材で駆け回る「日本ネット経済新聞」の記者が集まり、「2022年のEC業界予測」を語り合った。テーマは①OMO ②物流 ③コンプライアンス ④越境EC ⑤商品調達 ⑥ライブコマース ⑦メタバースーーの7項目。記者が取材で見てきた変化を振り返りつつ、今年のEC業界の行方を占う。記者の写真とともに、それぞれが掲げるEC市場を攻略するための「2022年のキーワード」も掲載している。
【⑦メタバース編】大多:2021年はメタバースという言葉が大きく注目を浴びた。2022年はこの流れを受け、3Dのオンライン空間であるメタバースを活用したECが活発化するのではないか。コロナ禍でバーチャルオフィスが有用性を発揮したことやオンライン飲み会が流行したことなど、実生活でオンラインでのコミュニケーションが増したことも追い風となっている。
仮想空間内で世界中の人々が自身のアバターを介してコミュニケーションを図れるメタバースは、既存のECにはなかった体験を創出できる。メタバース内での商取引はメタバースコマースとも呼ばれているが、実際のリアルの商品の販売という点でも進んでいる。
VR(仮想現実)内に3Dの店舗を開設するVR店舗みたいなものも顕著な例だ。そのVR店舗の中で、実際に商品が確認できて購入できる。そして実際のスタッフがアバターを通じて接客をする。そういった体験がすでに実現されている。
大多駿介 記者
【2022年のキーワード
「ボーダーレス」】
ECサイトと実店舗、現実とVR(仮想現実)、購買と体験、あらゆる行動や消費の境界が良い意味で曖昧なこと。
高野:百貨店や下着業界におけるメタバースの使われ方を2点紹介したい。百貨店でいうと2021年の3月ごろから、三越伊勢丹ホールディングスが、「仮想伊勢丹新宿店」での販売を行っている。VRを活用した仮想店舗だ。
それからワコールが2021年の3月から6月末までの期間限定で、VR店舗を開設している。VR店舗の利点としては、ECそのものの利点にもなると思うが、実際に顔を見せて、接客されるわけではないので、体の悩みを相談しやすいことなどがある。特に下着系はそうだと思うが、店員に話しかけやすいなど、仮想空間やオンラインならではの利点が発揮されているようだ。
メタバースによるEC市場の拡大というのは、今後かなり期待できるのではないかと個人的には思っている。