2021.12.13

【OMO・音声コマースで一新される購買体験】適切なタイミング・適切なデータ提供で小売DXの勝者へ

顧客データは適切なタイミングで活用を

どのようなビジネスでも、その時代の混乱の影響を受けるものです。新型コロナのパンデミックの影響もあり、実店舗を運営する小売企業はここ数年で、市場がオンラインやクラウドへと移行する速度が、いかに破壊的であるかを強烈に感じてきたはずです。まるで、危険を伴う炭鉱の中の道を、工夫とともに下るカナリアのような心境だったのではないでしょうか。

ABS(オーストラリア政府統計局)が調査した最近のデータによると、豪州のオンライン小売(EC)の流通額は引き続き伸長しており、7月の総小売支出の6.1%を占めていました。これは6月に記録された数字とほとんど同じで、5月の5.5%と比べると増加しています。一方、実店舗における小売の流通総額は、6月から7月にかけて0.1%下落しました。

しかし、小売業者は、ECが伸長を続けるというこの問題に頭を悩ませてはいないようです。小売企業は顧客とつながりを深め、顧客の声を実際の製造現場に戻すための、新しい方法を試すようになっています。実店舗では、デジタル体験と実店舗体験を融合させた自律的なショッピングの事例が登場しつつあります。音声コマースのテクノロジーも登場し始めており、店舗での買い物方法が変わってきています。 

ここで注意すべきポイントは、これらの新しい技術を構成するシステムが、かなり複雑で、人間が運用する上でトラブルが発生する可能性を持っていることが懸念されているということです。これらの新しいシステムは、既存のシステムとどのように連携し、機能していくのでしょうか。

まずは、実店舗とデジタル体験を融合させるシステムのメリットについて詳しく見ていきましょう。うまく運用すれば、顧客の流入の減少を逆転させる可能性があります。


二つの世界をブレンドする


あなたのブランドのお客さまがデジタルの世界に没頭しているのなら、実店舗でその体験を広げてみましょう。

オンラインとリアルの二つの世界をブレンドする方法はいくつかあります。 

例えば、実店舗に設置したデジタル端末を使った「エンドレスアイル」ショッピングを導入すれば、顧客は店内に在庫がない商品も、閲覧して購入できます。実店舗の営業スタッフに、個人データと在庫データへの迅速なアクセス手段を提供することで、他の店舗にある在庫をチェックしたり、競合他社の価格を確認したりすることもできます。オンラインでの購入を支援することで、カスタマーエクスペリエンスをパーソナライズして、「販売を節約」できます。

例えば、世界に2500以上の店舗を展開する美容小売のSephora(セフォラ)は、テクノロジーとビューティーアドバイザーとの個人的な時間を融合させたデジタル・メイクアップ・ガイドを提供しています。オーダーメイドのメイクアップ・オプションと、スマートフォンに表示される画像を提供しているのです。店頭でのメイクアップは、データの中の顧客のプロフィールに取り込まれ、商品の購入に役立てられます

 


自律的またはキャッシャーレスショッピング


自律的な「グラブアンドゴー」ショッピングも注目のテクノロジーです。実店舗でアプローチを試みている「AmazonGo(アマゾンゴー)」を例にとってみましょう。消費者は、「Amazon Go」の店舗に足を運び、商品を選んでかごに入れ、そのまま店を出て行くことができます。商品の計算や決済は、「仮想カート」が行います。

Grabango、Standard Cognition、Trigo Vision、Zippinなどの新興企業は、新しい実店舗をオープンしたり、小売ブランドと提携したりして、従来の「実店舗」に、自律的なショッピングをもたらしています。既存の小売業者にとっては脅威となりつつあります。

顧客は何を求めているかを知っています。顧客が望むシームレスな体験を提供するためには、わざわざ出かけることを好む小売業者もいれば、特定の市場の顧客に合わせて差別化を図る小売業者もいます。 


音声コマース


買い物客がデジタルアシスタントを介して商品を選択して購入できる「音声コマース」は、従来の対面での販売やデジタルでの購入に対して、新しいチャネルとして登場しました。 AmazonのAlexaデバイスを使用すると、消費者は音声で商品を閲覧、購入、再注文できます。Alexaでは、AIが、消費者の履歴に基づいて製品を推奨します。

グーグルも、音声コマースに急速に移行しています。 OfficeworksとWoolworthsは、Googleアシスタントとサービスを統合することで、音声コマースの最前線に立とうとしています。AmazonとGoogleは、音声コマースの市場で主導権を握っている小売業者の、大きな二つの事例です。 


複雑さを制限するための相互運用性の確保


実店舗とデジタルの融合、音声コマースといった、小売業におけるイノベーションの加速には、デジタル情報の移動のプロセスが、シームレスかつ確実に実行されることが必要です。それには、電子情報とアプリケーションを統合することが非常に重要です。

ブレンドされたリアルとオンラインの体験は、POSとどのように通信するのでしょうか。バックエンドとデジタルアシスタントはどう連携するのでしょうか。 

小売分野におけるリアルとオンラインが融合する体験において、システムに組み込まれたアプリケーションが機能するプロセスは、適切なデータを適切なタイミングで顧客に提供できて初めて、メリットが生まれます。これにより、小売業におけるオペレーションのスピードは向上し、顧客満足度が向上し、売り上げが向上するのです。そして、より優れたコスト効率を達成することができます

これができなければ、カスタマー・エクスペリエンスは最終的に、企業の別の機能から切り離されてしまいます。

顧客体験は最も重要です。小売業者は大きなコストをかけて、優れた顧客体験実現のためにデジタルトランスフォーメーションを推進しています。小売企業は、持続可能なシステムを構築するために、統合的な方法でイノベーションを図る必要があります。



堀和紀(ほりかずのり)カントリーゼネラルマネージャー



日本電気株式会社にて、運輸、流通、サービス業の担当SEを経て、1995年、日本マイクロソフト株式会社入社。同社のエンタープライズ部門でプリセールスSEリード、金融営業マネージャー、コンサルティング・サポートサービス部門でデリバリー統括本部 業務執行役員統括本部長、業務執行役員営業統括本部 統括本部長を歴任後、2020年9月よりBoomi カントリーゼネラルマネージャー。




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