2021.12.09

消費者庁「アフィリエイト検討会」、悪質広告対策の方向性示す 法執行など3つの観点から

消費者庁はこのほど開催した「第5回アフィリエイト広告等に関する検討会」で、悪質なアフィリエイト広告を排除するための対策の方向性を示した。表示の適正化に向けた広告規制は、①問題のあるアフィリエイト広告に対する法執行 ②広告主によるアフィリエイト広告の管理方法(未然防止の取り組み) ③アフィリエイト広告に関する官民協同による情報共有体制の構築――の3つの観点から行う。
 
広告規制の結論は、12月23日の会合で取りまとめる方針。
 
検討会では、問題のあるアフィリエイト広告に対する法執行では、景表法上、アフィリエイト広告であっても広告主の表示とされるものであることを周知徹底する必要があると指摘された。さらに、広告主と出資会社やコンサルタント会社が一体となって、アフィリエイト広告を用いた事業活動を行っていると認められる場合は、これらの会社にも景表法を適用するべきではないかという意見も挙がった。これには、アフィリエイトサービスプロバイダ(ASP)も該当する。
 
アフィリエイト広告に関する官民協同の情報共有体制の構築については、自主ルールの策定や、ルールの効果的な運用、問題ある広告主などの情報共有を行うために、アフィリエイト広告の関係事業者による協議会といった仕組みの設置が必要ではないかとする意見も挙がった。


既存法の活用に活路

検討会の委員を務める、公益社団法人日本通信販売協会(JADMA)の万場徹専務理事は、「新たな規制を設けても、ルールを守らない悪質な事業者が従うとはいえない。むしろ、善良な事業者の負担が増えてしまうだけ。悪質な事業者や広告配信業者の排斥は、薬機法や健康増進法など、既存の法律を活用することで対処できる」という考えを示した。
 
これには、景表法を含めた通販広告に精通している薬事法広告研究所の稲留万希子代表も強く賛同している。稲留氏は、検討会で議論に挙がった、ASPなど周辺企業にも景表法を適用することは難しいと感じたという。景表法のルール上、表示の主体者が責任をとるという考え方になっているためだ。「それならば、現行法をうまく活用していけば、悪質な事業者やASPを制御していくことができるのではないか」(稲留氏)と指摘している。

万場徹専務理事はこの他、アフィリエイト広告の被害について、事実に基づいて議論してほしい旨を強調。アフィリエイト広告市場において、具体的にどれくらいの件数の被害が生じているのかという事実が明確に示されていないことを疑問視した。「一部の悪質な事業者の取り締まりのために、事業者全体に網(新たな規制)をかけて刈り取っていったら、何の発展もない」(万場氏)と話している。
 
ASPは規制強化におおむね賛成のようだ。アフィリエイトのプラットフォームを運営するファンコミュニケーションズは、「ルール違反を行う企業はASP企業に限らず、ルールを順守して事業活動をするべき。それを守らなかった場合は摘発し、排除するのが望ましい。業界のイメージダウンにならないように健全に事業活動を行い、広告やメディア運営者にもそれを求めて啓発していく」と話している。
 
同じくASPのバリューコマースは、「不当表示を放置、繰り返し行う一部の悪質なASP企業に対しては何らかの法的措置を講じること自体に異論はない」という。一部の悪質なASPによってアフィリエイト広告自体の印象が悪くなっているため、それらを規制していくことは同社や業界にとって中長期的にはプラスになると考えているためだ。取り締まり強化によって悪質な利用者が排除されれば、より広告主に信頼される業界になるとみている。



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