2021.11.17

【フラクタ、シナブル、富士ロジテックに聞く】コロナで進化する『顧客体験』を商機に!「脱丸投げ」「顧客主体」が鍵


成功している事業者は顧客と「対話の場」を設けている


――事業者側は消費者の変化にどう対応していますか?

河野:事業者の大きな課題は、顧客目線のサービスを提供できる体制がないことだと思います。リアル店舗に来店した顧客から「在庫がない商品を後日、自宅に送って欲しい」と言われた際に、店舗スタッフが自分たちの店舗の売り上げにならないからできないって言ってしまったら、どんなに仕組みを作っても意味がありません。これは評価の体制ができていないということです。ブランドが急速にOMOを進め、店頭で会員登録を促すために、レジに長い列ができてしまっては、良い体験を提供できません。

事業者側でどういう体制が必要かを考え切れていないとこういった事態に陥ります。それぞれの担当事業レベルで「これは無理」「こうしないとできない」という事業者側の都合でサービスを構築すると、顧客目線のサービスは作れません。

2019年までは「店舗やバックオフィスの都合もあるし、それぞれの事情を聞いて何とかしていきましょう」というのが許される時代でした。それがコロナ禍を経て、適切な対応をしていかなければ生き残っていけなくなりました。

顧客目線のサービス設計をうまく実現している事業者は、顧客とのコミュニケーションの場を用意しています。店頭で会員登録を促す際も、ただ「登録してください」と言うのではなく、「会員登録していただくとこういうメリットがあるのでぜひ登録してください」と店舗スタッフが自分の言葉で伝え、顧客の声も聞くことができます。在庫がない商品を後日、顧客の自宅に送るサービスを紹介する際も「ちょっと時間がかかっちゃうんですけど、こういうプロセスでできるんです」と伝えることができています。

顧客と対話しながら事業者が「こういうことが便利なんだ」「楽しいと思ってくれるんだ」「喜んでくれるんだ」と理解していくことが必要だと思います。いきなりデジタルで完璧な仕組みを作ろうとするのではなく、サービスを作りながら「すいません手間かかるんですけど許してください」と顧客に理解を得ながら、声を聞くことが重要なのです。

未曽有の災害を経て、消費環境が急速に変化しているのです。経営陣もいきなり完璧を求めるのではなく、小さくても成功を積み上げていくことが重要だと感じています。


データ活用が理解できていないケース多い


曽川:当社へは「オンラインとオフラインのデータを活用してリピート購入を増やしたい」という相談が多く寄せられます。「データを活用したい」とおっしゃる方が多いのですが、データを活用した販促がどういったものかをきちんと理解できていないケースがたくさんあります。

経営陣や上司がやたらデータを分析したがるために、担当者が一生懸命、データ分析しているケースもあります。「レポートを作成するのに2週間かかりました」という話も聞きますが、そこに時間を割くのは本質的ではありません。

デジタルで成果を出すには、データを分析するだけではダメです。データを分析できる環境を整えた上で、「この数値を上げたいから、こういう施策をやってみる」と仮説を立て、PDCAをたくさん回すことが重要になります。


曽川雅史氏

シナブル クライアントコミュニケーション&マーケティング部 部長。シナブルはECサイト特化型MA/CRMツール「EC Intelligence」を提供している。ウェブ接客やCRM、レコメンドエンジン、検索などの機能を1つのプラットフォームで提供することで、導入企業がデジタル施策を実現する労力やコストを削減することに貢献している。



コストを抑えてスピード配送実現のため複数拠点から出荷


西間木:コロナ前、特に化粧品や健康食品といった分野ではそこまでリードタイムを気にしなくて大丈夫でした。大手事業者は当日配送に対応していましたが、中小事業者であれば翌日配送でも充分なスピード感でした。それが競合サービスや類似商品などが増え、「翌日届かないと選んでもらえない」と考える事業者も増えています。スピード配送が徐々に必須になってきていると感じています。

スピード配送のニーズを満たし、配送コストも抑えるために、複数拠点から出荷するケースが増えています。拠点を分散することで、負荷を減らすことができ、対応スピードも上がります。さらに顧客に近い拠点から出荷することで配送コストを下げることもできます。

返品・交換対応においても、顧客が最寄りのコンビニや宅配会社の配送センターから着払いでEC事業者の倉庫に送ると配送コストの負担がかさみます。倉庫が東京に1カ所しかない場合だと、北海道の顧客からの返品・交換の送料はかなりの額になります。複数拠点を設けていれば、より近い倉庫に返品してもらうことで、送料負担を抑えることもできます。

RECOMMEND合わせて読みたい

RELATED関連する記事

RANKING人気記事