2021.11.05

【<徹底解明>モール物流戦争の行方】第4回 Amazon、独自の物流戦略が目指す未来


「モール物流戦争の行方」第4回では、モール物流で先行するAmazonの現状と展望について深掘りする。Amazonの物流サービス「フルフィルメント・バイ・アマゾン(FBA)」の利用店舗から「一時、配送品質が下がった」という声も上がっている。トップランナーに死角はあるのか、独自戦略が目指す方向性はどこなのかを探る。


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Amazonは今年10月、東京・青梅市と千葉・流山市に2つの物流拠点「フルフィルメントセンター(FC)」を新設したと発表した。これにより、国内のFCは合計20カ所以上となった。2拠点の新設により、商品保管能力は10%以上増えたという。


今年9月に稼働した「アマゾン青梅フルフィルメントセンター」

Amazonの物流資産の規模は、他のモールをはるかにしのぐ。自社物流拠点を強化している楽天グループ(楽天)も、ECモール出店者向けの物流拠点「Rakuten Fulfillment Center(RFC)」は6カ所にとどまっている。

自社ECサービスである「Rakuten24」の物流拠点2カ所を合わせても計8カ所。2025年までに日本郵便と共同の物流拠点を11~13施設に拡大する計画だが、それでも拠点数ではAmazonに及ばない。

物流設備の機能やシステムについても、グローバルで磨きをかけた仕組みを導入しており、国内事業者が簡単には追い付けない水準にあると言えるだろう。


「プライムでも届かない」、配送品質低下の危機


日本においても随一の物流機能を有するAmazonだが、サービス品質に疑問符を投げかけられる事態が生じていたという。

あるEC企業は「一時期、Amazonの配送クオリティーが下がった。プライムの対象商品が翌日届かないことがあり、顧客から不満が寄せられていた。コロナ禍に注文件数が増え、配送人員が不足していたことが原因のようだ」と話す。

Amazonは大手宅配会社の配送網だけでなく、自社で配送ネットワークを構築している。配送委託業者「デリバリープロバイダ」との連携や、個人事業者のネットワーク「Amazonフレックス」を活用し、大手宅配会社に依存しない独自の配送網を築いているのだ。

独自の配送網を持つことで、より効率的な配送サービスを構築できる可能性がある。しかし、そのリソースの確保やサービス品質の維持を自社で行わなくてはいけなくなる。コロナ禍で注文件数が急増したことで、このバランスが少し崩れたようだ。

配送クオリティーの低下を指摘したEC事業者は、「Amazonも改善に取り組み、配送遅延などは現在、ほぼ解消されている。Amazonのスタッフからは『今後、FCで保管している商品は指定期日内にしっかりと届けられるようにする』と聞いているので安心はしている」と話す。

Amazonは今年7月、東京近郊エリアのデリバリーステーションを5カ所開設し、数百人規模の「Amazon Flex ドライバー」を募集すると発表した。拠点や人員を増強し、配送インフラを強固なものにしようとしている。

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