2021.10.19

【ワークマン、メーカーズシャツ鎌倉、丸井、ルミネに聞く】EC ・実店舗のCRM戦略は「顧客分析」がカギ!「人材不足」は積極的に外部委託を

「店舗受け取り」はデフォルトのサービスに

ECと実店舗の両方を使ったCRM戦略においては、セグメントされた顧客に適切な情報発信を行う必要がある。そのための「顧客分析」が成否のカギを握るようだ。本紙ではこのほど、EC・実店舗の両方を展開する、ワークマン、メーカーズシャツ鎌倉、丸井グループ、ルミネの4社のCRMの取り組みについて取材、EC・実店舗間の相互送客を狙った取り組みについて聞いた。各社が、いま取り組んでいるCRMの取り組みとして挙げたのは、「実店舗受け取り」や「アプリの利用促進」「CRMツールを使ったパーソナライズしたメッセージ配信」といったことだった。一方で、事業者からは、「人手不足でCRMに割く人間・時間が捻出できない」(ワークマン)といった声も聞かれた。ECサイトの構築や運用支援などを行うクロス・コミュニケーションは、「まずは、どのターゲットにどんな情報を訴求するかの分析を行うことが肝心だ。必要に応じて分析を外部委託することも必要だ」(檜垣篤史ゼネラルマネージャー)と話している。
 

店舗受け取りで固定顧客拡大


「ECで注文した商品を実店舗で受け取る施策」について聞いたところ、丸井グループ、ルミネ、ワークマンの3社が「実施している」と回答した。

ワークマンでは、全国919カ所の実店舗を活用し、「実店舗でEC購入商品を受け取れば、送料無料」をキャッチコピーに、ECの利用を拡大させている。2020年には、ECのリニューアルを行い、「店舗受け取り」の訴求を強化した。その後は、EC―実店舗の相互送客が成功。コロナ禍でも、実店舗の売り上げが落ちることがなかったという。ECの売り上げは、前期比32%増で推移したとしている。

ワークマンでは、ECの購入商品の店舗受け取りを始めた結果、「きっかけがなかったため実店舗に来たことがなかった顧客」を、実店舗に誘導することができるようになったのだという。実店舗に来店した顧客の満足度は高く、初めて実店舗に来店した法人顧客の9割が固定化しているのだとしている。

ルミネでは、「店舗受け取り」を選択した顧客に特典を提供するキャンペーンを実施するなどして、EC・実店舗間の相互利用の促進を図っているという。ルミネでは、公式アプリを活用して、実店舗とECの顧客の情報を、一元的に把握できるようにしている。セグメントした顧客への情報発信を行い、実店舗・EC間の相互送客を行っているという。

丸井グループでも、プライベートブランド(PB)「RU(アールユー)」「ラクチンきれいシューズ」について店舗受け取りを実施。ECで見つけた商品を、実店舗で試着した上で購入することを、顧客に促しているという。


CRMツールの導入はデフォルトに


CRMを推進するに当たって、「CRMツール」を導入したり、「アプリ」の利用を促したりすることは一般的になっているようだ。「LINE」の友達登録を促す企業も増えている。

丸井グループではこうしたデジタルツールの活用について、「パーソナライズしたメッセージ配信を行っている。ECの2回目利用を促すためにクーポンを配布している」(広報)としている。

ルミネでは、「初回購入後一定期間後にクーポンを発行して、2回目以降の利用促進を図っている。『カゴ落ちした顧客がいる』『値下げした商品がある』『在庫残り1点の商品がある』などの場合、LINEやメールでメッセージ配信し、リテンションしている」(マーケティングコミュニケーション部)ということだ。

「メーカーズシャツ鎌倉」のEC運営を手掛けるサダ・マーチャンダイジングリプリゼンタティブは、「CRMツールを使ったメルマガ配信」「ウェブ接客ツールを使ったポップアップの出し分け」「実店舗スタッフによるECサイトのチャット対応」などを実施しているという。一方で、ロイヤル顧客に対しては、季節ごとに、手書きのお礼状を同梱するといった、アナログな取り組みも実施しているという。

 

課題は「顧客分析」と「人材」


CRM施策を実施する各社からは、「2回目以降の利用が、爆発的には伸びない」(丸井グループ)「顧客の細分化やレコメンド機能の充実化が必要」(メーカーズシャツ鎌倉)といった課題を挙げる声も聞かれた。

クロス・コミュニケーションの檜垣氏によると、CRMのメッセージ配信を行う場合、顧客のペルソナ(ターゲット設定)に応じて、適切なメッセージ配信を行う必要があるという。顧客のニーズを適切に把握しないまま、自動的にメッセージ配信を行うだけでは、CVRの向上などの効果が見込みづらいという。

「自社のCRMの目的が、『2回目以降の購入を増やす』ことなのか、『何度も購入してくれるロイヤルユーザーを増やす』ことなのかで、取るべき戦略が変わる。まず、自社の顧客のニーズを的確に把握することが不可欠だ」(檜垣氏)と話す。

「人手不足でCRMに割く人間や時間を捻出できていないところが課題」(ワークマン)とする企業もあった。今回取材した企業に限らず、ECのCRMについて、「人手不足」を課題に挙げるEC担当者は少なくない。

クロス・コミュニケーションの檜垣氏は、「顧客分析やCRM施策の立案を、外部の専門性の高い支援会社にアウトソーシングすることも有効な手段の一つだ」と話す。
 

アンケート調査でインスタの「シグナル(いいね、保存など)」2倍に


クロス・コミュニケーションは、ECサイトのシステム構築から、EC運営のコンサルティングまでを一貫して提供している。

2021年6月には、EC事業支援サービス「SPACESHIPS~D2C BERAKTHROUGH PARTNER~」の提供を開始した。クロス・コミュニケーションが強みとする、独自のパネルアンケート調査を導入企業の既存顧客に対して行い、潜在的なユーザーのニーズを可視化する。顧客ニーズを把握した上で、⓵ブランドの方向性の立案や商品開発②ECサイトの設計③広告・SNSの運用④CRM施策の提案――などを実施するのだという。

「SPACESHIPS」を導入するアクセサリーブランド「ROOM」の事例では、顧客アンケートを活用した結果、インスタグラムのエンゲージメント数(「いいね!や保存!」の数)が、施策の実施前の2倍以上に向上。顧客のファン化を促進することができたという。「ROOM」では、自社の顧客に対して、「スタイリング」や「趣味」に関するアンケートを実施。その結果、「ゴールドアクセサリー」「ピアス」に関心が高いユーザーが多いことが分かったという。その後、インスタグラムの公式アカウントで、「ゴールド」「ピアス」をモチーフにした写真を多く投稿するようにしたところ、エンゲージメント数が急増したとしている。


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