2021.10.11

新市場への挑戦は、シンプルなデータ管理・分析・活用が必要【Cohesity Japan 笹岳二 シニア SE マネージャー コラム】

急増するデジタルデータ、新ビジネスに賢く生かす

急増するデータを今すぐ把握する


いまや、誰もが、自社が保有するデータやデータ分析の魅力的な部分を誇示したがります。データを使った機械学習やIoT、AIなどの技術は、企業のビジネスに多くの可能性を提供するからです。

しかし、データを活用したイノベーションに注力する前に、自社が保持しているデータについて、もっと詳細に把握する必要があります。さまざまなデータが統合され、標準的かつシンプルな形で保有されていなければ、データの分析や調査、活用を行うことは困難です。コロナ禍に突入してからこの1年で、企業と顧客とのデジタルでの接点は急増しています。多くの企業が、新しい市場チャネルを開拓するために、自社のビジネスモデルを更新し続けています。今こそ、この急激な変化を捉え、データソースを統合し、将来的な、データ主導型のイノベーション戦略を考えるべき時なのです。

IT業界では、多くのシステムベンダーが、常に次の大きな挑戦に目を向けています。一方で、最新のテクノロジーがビジネスレベルで普及するまでには、相当な時間がかかるということを忘れがちです。これは、人工知能 (AI)、IoT、機械学習 (ML) などの技術にもあてはまります。これらのテクノロジーは現在、企業において、ビジネスの効率性を高めるために、さまざまな形で導入が検討されています。企業は、これらの技術を活用し、顧客のニーズにより深く早く応えるための方法を模索しています。今まさに、最新技術がビジネスの現場に次々と導入されており、さまざまなデジタルツールが注目を集めているのです。

その一例がERP (Enterprise Resource Planning) ソフトウェアです。IoTやAI、MLを組み込むことにより、月次決算から生産ラインの効率化に至るまで、あらゆるビジネスプロセスを支援することができます。

IoT、AI、MLを活用するには、その技術に取り込むデータを、標準的かつシンプルな状態にしておく必要があります。今こそ、運用するデータをシンプルにした上で詳細に把握し、デジタル化の加速がもたらすメリットを最大限に享受するときなのです。


パンデミックがもたらした三つの効果


パンデミックのおかげで、世界中の国々において、在宅勤務体制に急きょ移行する企業が相次ぎました。パンデミックの初期段階においては、多くの企業で、ローカルでのデータ保存が増えてしまいました。顧客からのウェブサイトへのアクセスが増加しました。企業が、急激に増加した顧客データを把握しきれていないというケースも少なくありません。この問題には、早急に対策を講じる必要があります。

パンデミックがもたらした大きな影響は三つあります。「社外のクラウド利用の増加」「デジタル化のプロジェクトの数の増加とそのスピードの加速」「購入やコミュニケーションにおける、オンラインユーザーの意欲と願望の増加」――の三つです。

マッキンゼー社の調査は、変化のペースを如実に示しています。同調査では、パンデミックの際には、企業が平常時に想定していたよりも20~25%速いスピードで変化が起こったケースが多い、と報告しています。最新テクノロジーのビジネス利用の拡大は、25倍の速さで進んだとしています。ビジネスの意思決定における、最新テクノロジーの利用拡大も、25倍の速さで進みました。また、資産のクラウド移行も24倍の速さで進んだことが明らかになりました。

さらに、マッキンゼー社の調査によると、顧客とのやりとりは、従来にも増してデジタル化されているとしています。ECやオンラインサービスに対する顧客需要の高まりは、平常時の27倍の速さで加速しています。顧客のニーズや期待は、コロナ前の24倍の速さで変化していることも明らかになりました。

こういった需要の急速な変化は一斉に、さまざまな事象の引き金になります。オンラインの顧客が増えれば顧客や購買データも増えます。ひいては、AIやMLシステムに「食わせる」データが増えますから、より強力な情報に変えることもできるようになります。クラウドプロジェクトとデジタル化プロジェクトの両方が加速的に成長しているということは、基本的な仕組みが整備されつつあるということを意味します。


成功への障壁


データは爆発的に増加しています。データは、複数のパブリッククラウド環境やデータセンターから、リモートオフィスやエッジに至るまで、無数の場所に散らばっていきました。ただ、そのデータ全体を掌握するグローバル監視は、ほとんど行われていません。グローバル監視の場では、データのバックアップや復旧、監査/コンプライアンス、ネットワークストレージ、アーカイブ、開発/テスト、アナリティクスなど、さまざまな機能に特化したインフラにデータが隔離されています。多くの場合、これらの機能は、複数のベンダーから提供されています。

状況をさらに悪化させているのは、データが複数のストレージ(倉庫)に分散して保管されているという状況です。そして、データ保管に利用するインフラもまた、分散されてしまっているのです。例えば、1つのバックアップソリューションは、バックアップソフトウェア、マスターサーバー、メディアサーバー、ターゲットストレージ、重複排除アプライアンス、クラウドゲートウェイなど、複数の専用のインフラで構成されています。そして、各インフラは、異なるベンダーから提供されることがあるため、運用面、保守面で複雑な状態を生み出す原因になっています。

このようなデータ保管におけるインフラの分散化は、データを保管するストレージの格納効率(設置面積)にも影響を与えます。ストレージは通常、データが格納できなくなることを防ぐために、余裕を持った容量で設計されています。

ストレージが統合されていないと、容量が大きくなりすぎて無駄が多い構成になってしまい、データの占有面積の増大につながります。同じデータが、分散されたストレージ間でコピーされれば、無駄なストレージ領域を占有してしまうことにもなります。IDC社によると、ストレージに格納されているデータの60%がコピーされたデータの格納に使われてしまっているのです。
 

アクションプラン


優れたデータ管理を導入している企業は、データ管理システムを逐一改善し、データ量の増加にも耐えられる仕組みを構築しています。コロナのパンデミック以前よりも、顧客の行動に関する多くの知見を得ているのかもしれません。こうしたデータ管理に優れた企業は、顧客とのコミュニケーション戦略や、顧客の維持戦略を実施する上で、他の企業より優位に立っているはずです。データ管理に立ち後れている企業には、データを最大限に活用するためのアクションプランが必要となります。

データ管理を導入するための第一歩は、「データの棚卸」です。「パンデミック発生前と比べて何が変わったのか」「データはどこに保管されているか」「商品の品質とデータの関連性はどうか」「データの重複はないか」――などを確認することが必要です。「誰がどのデータにアクセスしているのか」「収集と保持に関する戦略はあるか」「ポリシーは適用されているか」「データポリシーが適用されている場合、そのポリシーは適切なものか」――などといったことも重要な確認事項です。これら情報はすべて、企業がビジネスで次に何をすべきかを知るために活用することができます。

このデータ監査と並行して、1年後、さらには5年後には、今のビジネスがどうなっていてほしいかを考えることが重要です。まず、自社がデータから何を求めたいのかを明確にします。次に、AIやML、IoTが、その実現にどのように役立つのかを考えます。そして、それらの目標を達成するために、必要なデータやクラウドベースのニーズを定義します。

現在の状況と、自社の未来像を把握したら、次は目標達成のためのルートマップを作成します。ここでは、データの孤立化を解消し、クラウドに保管するストレージと、社内に保管するストレージの使い分けを明確にすることで、重複データが存在する状況を解消することができます。

ルートマップの作成には、テクノロジーだけでなく、組織への配慮が必要な場合があります。ある企業では、企業の各部署が、収集したデータを独自に扱ってきたという伝統があるとします。パンデミック中には、このやり方で自由にビジネスを進めることができたかもしれません。今後は、データを集中的に一元管理する必要があり、各部署はそれに慣れていく必要もあります。

データはイノベーションに不可欠な要素です。ただ実際には、データを戦略的資産として活用できている企業はまれです。多くの企業のITチームは、データを競争上の優位性のために活用することはおろか、データの保護や、データを使用する際に必要な水準を満たすだけでも苦労しています。パンデミックによって引き起こされた課題は、最先端のテクノロジーを利用できる企業に、利益と機会をもたらしました。一方で、それ以外の企業は、次から次へとやってくる問題の解決に追われています。

AIやML、IoTなどの技術を最大限活用したデータ分析やイノベーションは、標準的かつシンプルなデータにアクセスすることができれば、最適な形で機能します。多くの企業は、パンデミックの間に「膨大なデジタルデータ」というギフトを手にしました。今こそ、そのギフトを賢く生かす時です。




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