2020.10.01

【やらせレビューの闇】 アマゾンで競合商品に☆1つ 福岡簡裁が罰金命令も、被害止まず


アマゾンなどのECモールで、自社と競合する商品ページにうその感想や低評価である星1つを投稿する、悪質な“やらせレビュー”が、EC事業者の頭を悩ませている。表面化せずに泣き寝入りを余儀なくされることが多いこの手のトラブルだが、今年4月、“やらせレビュー”を認めた会社社長に対して、信用棄損罪で罰金の支払いを命じる略式命令を、福岡簡易裁判所が出し、話題となった。“やらせレビュー”問題の根本的な解決につながる可能性がある画期的な司法判断だった。ただ、“やらせレビュー”の被害に遭ったという事例は、その後も後を絶たない。ECモールとのいたちごっこが続いているようだ。


名誉毀損で罰金20万円の略式命令


健康食品・化粧品ECを展開するR社の代表取締役の男は今年4月1日、サプリメントを販売する競合他社の信用を棄損したとして、起訴された。裁判の過程で、R社の代表の男(以下、男)は、レビュアーの女性に報酬を支払い、アマゾンの競合他社のサプリメントの商品ページに、低評価レビューを記載させたことを認めた。「一粒が大きくて飲みにくかった。独特なにおいも好きではなかった」などと、サプリメントを使用した事実がないにもかかわらず、使用したかのように装って、星1つの低評価レビューをつけさせていたという。

福岡簡裁は4月28日、この男に対して、罰金20万円の支払いを命じる略式命令を行った。


やらせレビューに罰金を命じた福岡簡裁(写真はHPから)

“やらせレビュー”を行わせた人が、刑事責任を問われることは、極めて珍しい。男をここまで追い詰めたのは、被害を受けた競合の健康食品販売会社の代表の男性の執念だった。地道な証拠集めに徹したのだという。

被害を受けた男性が異変に気付いたのは、2017年の末ごろだったという。自社の商品ページに事実とは信じがたい悪評の“やらせレビュー”が短期間で10件近く寄せられたのだ。男性が、低評価を付けたレビュアーの名前を仕事仲介サイトで検索したところ、同じ名前のユーザーを発見。レビュアーが、R社の代表の男から、低評価レビューを付ける仕事を依頼されていたことを突き止めた。R社の代表の男について調べたところ、アマゾンで競合商品を販売していることが分かったとしている。

男性は、アマゾンに、R社の代表の男によるやらせレビューについて通報した。しかし、「根拠がないことを理由に対応してもらえなかった」としている。

男性は、R社の代表の男とレビュアーに直接接触するなどして、地道に証拠を集めていった。最終的には被害男性の熱意と証拠が警察を動かし、起訴に持ち込むことができたという。

被害男性によると、「こうした他社への低レビュー評価で信用棄損罪を問えるケースはまれだ」としている。被害男性は、「競合他社によるレビューを使った信用棄損行為は、アマゾンに限らず多くのプラットフォームで行われている。今回の起訴と罰金の前例が、犯罪捜査の基礎になってほしい」と話している。

RECOMMEND合わせて読みたい

RELATED関連する記事

RANKING人気記事