2020.08.20

【越境EC新サービスに迫る】BEENOS 直井社長「モール出品から、マーケ、物流まで『世界へのインフラ』作る」

BEENOS 直井聖太社長


BEENOSの2019年10月-2020年6月期(第3四半期)におけるクロスボーダー(越境EC)事業の流通総額は、前年同期比12.7%増の360億4000万円と拡大している。海外ユーザーが日本のECサイトの商品を購入できる代理購入サービス「Buyee」の4-6月における流通総額は、受注ベースで前年同期比34.1%増となり、過去最高を記録した。コロナ禍において海外でもECの需要が高まる中、独自の物流サービスを展開するなど「流通を止めない」取り組みが奏功している。直井聖太社長は「海外モールへの出品や越境ECサイトの構築、海外マーケティング、海外配送、通関をワンストップで支援するグローバルECプラットフォームを構築する」と展望を語る。越境EC支援の老舗が挑む「世界へのインフラ構築」の全容に迫る。


「配送止めない」姿勢で越境ECが拡大


――コロナ禍における越境ECの状況は?

率直に言って状況は良い。新型コロナウイルス(コロナ)によって海外でもEC需要は確実に伸びている。ECを使わなかった方もECを学び、一度使うと止められない、という状況が世界各国で起こっている。当社のサービスは中国や香港、台湾など東アジアが強いエリアだが、直近では北米やASEANの顧客からの数字が伸びている。売れている商品は国・地域によって若干違う。アメリカ向けにはホビー関連が強い。コロナでマニアが増えたようだ。動画サービスで日本のアニメを見る機会も増えている。巣ごもりで家にいる間に日本のコンテンツに関心を持つ方が増えたり、もともと関心を持っていた方が日本のECサイトで買い物したりする機会が増えたのだろう。

――国際スピード郵便(EMS)が一部サービスを停止するなど物流面での障壁は?

当社は独自の物流網構築しているので、多少は影響があったものの、配送し続けることができた。競合サービスを使っていた方が当社のサービスに乗り換えたケースもあった。台湾や中国向けには独自の物流サービスを構築しただけでなく、EMS以外の配送手段を新たに開拓したりしている。越境ECを国内では最も古くからやってきており、流通規模が伸びているので物流サービスの構築にも投資できる。独自の物流サービスでは、海外配送や現地の宅配、店舗受け取りなどさまざまなパートナー企業のサービスを組み合わせている。独自に選定し、組み合わせることで安価なサービスを提供できている。

日本企業の越境ECにおいて最も大事なポイントは、物流にある。アメリカの場合は、越境ECというとカナダ、メキシコ向けが大きく、陸路で配送できる。日本は島国なので、越境ECとなると海を越える必要があり、地政学的に不利な面がある。物流コストをどうするかは大事なテーマ。例えば中国からアメリカは物流コストがかなり低い。確実に政府が後押ししている。インフラを国が支援し、企業が商売しやすい環境を構築している。日本はそこが課題だと見ている。国際物流は1社単独で安く配送しようと思っても限界があるので、われわれが手軽なサービスを構築し、流通を増やすことでコストを下げていくということをこつこつと取り組んでいる。気持ちとしては日本の共通資産を作っている感覚。さまざまな企業に活用していただきたい。


日本企業の越境ECの意識が変化


――コロナ禍で日本企業の越境ECの意識は変わってきた?

日本企業の意識は変わってきている。2008年に海外転送サービスを始めた頃は、チャンスがあると分かっていても二の足を踏む企業が多かった。そもそも海外予算を持っていない企業が圧倒的に多く、ここ20〜30年の日本を象徴していることだと思う。それが海外でも勝負できる商品やコンテンツを持っている一部の企業が「海外展開をやりたい」と言っていただけるようになってきた。

越境ECというと中国向けと考える企業もまだ多く、中国向け越境ECの支援会社も多い。ただ、米中の関係などグローバル視点で考えると中国依存は危険な面もある。インターネットやシステムがどんなに進化したとしても、一つの場所でしか使えないスキームで事業展開してしまうと、また新しい場所に展開するときに同じ労力をかけないといけなくなる。グローバル展開の仕組みを考えるときに全世界に向けて展開し、その中で国・地域で比重を付けていく戦略の方が得策だ。当社はグローバルへの支援体制があり、そういった提案をさせていただくことで、話が進むケースが多い。

――BEENOSとしてもコロナ禍において越境ECの支援体制を強化しているのか?

当社は2月中旬からリモート体制に入っており、いち早くコロナ対策を打ってきた。早いうちから人の流れは止まると見ており、その一方でモノの流れを加速させなければいけないと考えてきた。コロナ禍でブレーキを踏むのではなく、逆に新しいプロダクトを作り始めている。

飲食業界も本当に大変な状況にあるが、小売業界や製造業界の大変な状況にはあまり目が向けられていない。飲食店のようにいきなり売り上げがゼロになるわけではないが、間違いなくインバウンド消費に支えられていたので、コロナによるインパクトは大きい。メーカーの営業利益率は2、3%と低く、5%取っていたらいい方という水準。インバウンドがなくなり、売り上げが20〜30%減少するのはかなり痛手なはずだ。特に日本は固定費が圧縮しにくいので対策も取りづらい。

当社は以前からインバウンドと越境ECを組み合わせてやっていくべきだと提案していた。インバウンドがいくら来ても、それで終わりでは海外での認知度が広がっていったり、リピート購入につながっていたりしていかない。コロナ後はなおさら、インバウンドと越境ECの組み合わせが重要になるだろう。ただ、これまでは越境ECをやろうとなるとコストがかかったり、新たに経験者を採用したりする必要があり、企業の負担が大きかった。当社と組んでいただければ、初期費用がほとんどかからない状態で越境ECに取り組めるようにしていく。


RECOMMEND合わせて読みたい

RELATED関連する記事

RANKING人気記事