2020.07.30

【最高の顧客体験を提供する「実感型」デジタルマーケティング】 第2回「『実感型』デジタルマーケティングの成功事例①」

プラスアルファ・コンサルティング山崎雄司執行役員


大手通販・EC事業者を中心に550社以上の導入実績があるマーケティングプラットフォーム「カスタマーリングス」を手掛けるプラスアルファ・コンサルティング。同社の山崎雄司執行役員カスタマーリングス事業部 事業部長に、顧客に、より豊かな体験を提供できるという「実感型」のデジタルマーケティングについて教えてもらう企画をスタートする。このほど上梓したマーケター向けの書籍「最高の顧客体験を提供する『実感型』デジタルマーケティング」(東洋経済新報社刊)をひもときながら、前回の第1回に続き、第2回は「実感型」デジタルマーケティングで成功した企業の事例を教えてらう。


手段ではなく、目的を見据えたシステム設計を


「実感型」デジタルマーケティングに成功した、あるアパレル事業者の例をお話しします。その事業者がまず行ったのは、デジタルの顧客データの統合です。このとき企画を進めた責任者は、現場(運営責任者)から求められないような施策は適切でないという考えを持っていました。企画側の独り善がりにならず、現場をどのように巻き込んで、その気にさせるかというのは、顧客体験を提供する上で欠かせません。

企画をする人とオペレーションをする人(=現場)は多くの会社で異なると思います。企画側が主導して進めていく場合、やってしまいがちな失敗は、企画側の理想形を現場に強要してしまうことです。現場に「こういう環境(システム)を制作したので、現場で活用してオペレーションしてください」という形。これはよくない例です。

まずデジタルで……つまり、自分たちがハンドリングできる世界でデータを統合しながら、どういうことができるかというのを考えることが大切です。新しいプロジェクトが本当に実現可能かどうか、効果や効用、技術的な観点から検証する、いわゆるPoC(概念実証)的な考え方です。例に挙げているアパレル事業者は、自分たちの責任範囲(デジタル)の中でやってみて、それをちゃんと機能させて成果を出してから、少しずつ店舗側もそのデータを展開していくというやり方を行いました。

店舗のオペレーションは、来店したお客さんに対して提供していくというスタイルがベースです。なので、どこのお店でどんな商品が売れたのかは分かっています。どの商品が売れ筋なのかということも。ただ、顧客のデータはそこにほとんどひも付いていません。最後に来店したときからどのくらいの期間が開いているのか、自分たちが行っている施策の対象顧客だったのかといったことが、店舗のスタッフには分かっていない状態です。つまり、お店(企業側)からやっている施策の反響はあまり分かっていません。

企画側としてまずは、顧客のデータと、実際の購買の情報を統合し、店舗のスタッフが見られるシステムを作っていくということになります。

そこからは、店舗スタッフとのコミュニケーションを重ねて、システムを進化させていきます。「購買の情報と顧客データをひも付いて見られる環境(システム)を作ったので、ちょっと見てみて(試してみて)もらえませんか」と。それによって、店舗側からも要望が出てきます。「店舗側でこういう施策に実は取り組んでいて、ここがないから困っている」など。

その要望をくんでブラッシュアップしたり、店舗側のオペレーションを柔軟に変化してもらうなどしていきます。そういうお店の方々との双方向のやりとりを重ねて、店舗と組んだ新たなマーケティングの様式が展開されると、店舗側からさらに「このデータをもとにDMを送りたい」といった追加の要望が寄せられるでしょう。その繰り返しでどんどん進化していく。これが、「実感型」デジタルマーケティングが非常にうまくいっている事業者のやり方でした。


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