2025年3月までに原則義務化される「EMV3‐Dセキュア」の現状や、不正利用が増加の一途をたどるEC業界の対策について、不正検知サービス「ASUKA」を提供するアクルの近藤修社長と、GMOペイメントゲートウェイ（GMO-PG）の財津拓郎氏が対談した。EC事業者が取り組む対策のほか、今後の展望にも話は及んだ。
──不正利用の増加が続いている。何が起こっているのか2人に聞きたい。 財津：クレジットカードの番号盗用被害が増えている。毎年100億円ほど番号盗用による被害額が増加しており、主なターゲットとなっているECにおける多面的・重層的な対策が求められている。
不正利用の被害にあった加盟店とそうではない加盟店ではセキュリティー意識にいまだ差があるように感じる。実際は被害に遭ってからではなく、ECサイトセキュリティーを網羅的に講じていくという流れへ徐々に変化してきている。
近藤：ECにとって売り上げを増やすことはとても重要で、マーケティングへの優先度は高い。そのため、セキュリティー対策における優先度合いは低くなる傾向がある。結果的に不正の被害に遭ってしまう。また、不正が起きた際に何をしたら良いか分からないという課題もある。
2024年3月に更新された「クレジットカード・セキュリティガイドライン」においては、「EMV3-Dセキュア（3DS）」だけではなく、多面的・重層的な対策を推奨することが明文化された。さらに不正の手口がより巧妙化しており、従来型の対応では防ぐことができなくなっているのが現状だ。セキュリティー対策が甘いECサイトへ不正者が集中していることも被害額増加の背景にある。
──「クレジットカードセキュリティガイドライン5.0版」でEC事業者が今後対応すべきことは？財津：「3DS」の導入だけではなく、決済前・決済時・決済後という一連の流れとして捉え、場面ごとの対策導入がこれから目指すべき全体像として明記された。決済時だけの対策では、アカウント情報が乗っ取られてしまえば、なりすましでログインされて防ぐことができない。決済前と決済後にも不正検知システムを導入するなど、対策を強化することで不正はしづらくなる。
決済前はEC加盟店の領域であり、当社のような決済代行会社は手が出しづらかった。ガイドラインが明示されたことで、加盟店に対して決済時以外の不正対策の必要性を説明できるようになり、アクル様をはじめとする不正検知ベンダー様と一緒に対策を打てるようになったメリットは大きい。
近藤：時系列に応じて重層的な対策が必要であることが示されたことが大きい。
決済における動線という点について、ログイン時・決済時・決済後の対策として、属性や行動分析、不正配送先情報は「ASUKA」が得意とする分野だ。線での対策としてはEC事業者に対して今後より機能を強化して提供していく。
──「3DS」の導入でEC事業者が得られる効果と、今後の課題は？財津：不正利用を防ぎ、減らすことができることに加え、チャージバックがイシュア（カード発行会社）の責任になるため、チャージバックが免責される点が大きい。
未導入加盟店からは「カゴ落ち」を懸念する声もあるが、ASUKAのような不正検知サービスを併用することでカゴ落ちを低く抑えることも可能と考える。
近藤：3DSの義務化で、ECのセキュリティーレベルが向上する。結果的にセキュリティー対策をしていなければ、減収につながるという状況になるだろう。
ただ、3DSを補完する仕組みとして不正検知システムを活用することでさらにオーソリ承認率の向上に寄与でき、結果としてECの売り上げ向上につながると考えている。
──不正が増加の一途を辿る状況で今後のそれぞれの役割は。財津：カード会社、不正検知ベンダーとの協力体制を強化し、巧妙化する不正に対し適切な対応をするようEC事業者に求めていく。あわせて当社のセキュリティソリューションの拡充も推進している。2025年4月以降も対応しきれていない事業者が出てくることが予想され、引き続きEC加盟店はもちろんのこと、パートナーであるECカート企業も含めて広く啓蒙活動をしていきたい。
近藤：日々新たな手口に対してアップデートを進めており、3DSでは対応できない部分を補完的に強化していく。GMO-PG様と協力をしながら、ECの売り上げ増加に貢献していきたい。
【不正検知サービス「ASUKA」】https://akuru-inc.com/service/asuka/
